産後ケアホテルでは何をする?受けられるケアと滞在中の過ごし方

産後ケアホテルでは、助産師や看護師などが常駐し、休息とケアのために滞在する施設で、母親の身体を回復させること、赤ちゃんのお世話を任せて休むことができます。この記事では、受けられるケアの内容と滞在中の過ごし方、自治体の制度との違い、そして妊娠中にできる準備までをまとめます。
【この記事で分かること】
- 産後ケアホテルで受けられるケアの内容と、滞在中の過ごし方
- 自治体の産後ケア事業と民間の産後ケアホテルで、任せられる範囲がどう違うか
- 妊娠中にやっておける準備と、その期限
産後ケアで提供される4つのケアと、滞在中の1日の流れ
ケアの内容は施設によって異なりますが、産後ケアで提供するものとして、公的なガイドラインでは次の4つが挙げられています。
- 母親への保健指導・栄養指導
- 母親の心理的ケア
- 適切な授乳が実施できるためのケア(乳房のケアを含む)
- 育児の手技についての具体的な指導及び相談
滞在中の過ごし方も施設ごとに違いますが、宿泊型ではおおむね次のような流れになります。
| 場面 | 行われること |
|---|---|
| 到着後 | 体調や困りごとを聞き取り、その評価に基づいて滞在中のケアプランを立てる |
| 日中 | 授乳や沐浴などのケアと指導を受けながら、空いた時間は休息にあてる |
| 食事 | 産後の身体の回復に配慮し、帰宅後の生活の参考になる内容が用意される |
| 夜間 | 宿泊を伴う場合、助産師などの看護職が24時間体制で1名以上配置される |
参照元:産前・産後サポート事業ガイドライン/産後ケア事業ガイドライン(こども家庭庁)
なお、宿泊を伴う産後ケアの実施場所としては、病院・診療所・助産所のほか、居室、カウンセリングを行う部屋、乳児の保育を行う部屋といった設備を備えた施設が示されています。滞在する場所には、人の配置と設備の両面で条件が置かれていると考えるとイメージしやすくなります。
母親の身体を回復させるためのケア
産後の腰痛や尿失禁などに対しては、骨盤底筋体操の指導や、腰に負担のかからない赤ちゃんの抱き方、授乳の姿勢、沐浴の方法といった、日常の動作そのものを見直す指導が行われます。自宅では痛みをこらえたまま自己流の姿勢が固まっていきやすいので、助産師や看護師に見てもらえる期間があると回復の助けになります。
帝王切開で出産した場合は身体の回復にかかる時間が変わってくるため、術後の経過については帝王切開の術後の痛みが不安な方へもあわせてご覧ください。
食事も回復を支える要素の一つです。授乳中はエネルギーやたんぱく質、ビタミン類、葉酸などを妊娠前より多く摂ることが推奨されており、栄養を考えた食事が用意されること自体がケアにあたります。あわせて、食欲や疲労の有無、睡眠がとれているか、周囲のサポートがあるかといった点を支援者が確認し、心理面の状態も把握していきます。
赤ちゃんのお世話を代わってもらい、やり方を教わる
抱き方、オムツ交換、沐浴、寝かしつけといった手技は、赤ちゃんの月齢や発達段階に応じて教わることができます。父親・パートナーが一緒に指導を受けられる施設もあり、退院後の分担を具体的に決める場としても使えます。自宅に戻ってから聞ける相手が身近にいない場合は、滞在中に確認しておくと負担の感じ方が変わってきます。
赤ちゃんを預かってもらえるかどうかは、施設と時間帯によって異なります。こども家庭庁の産後ケア事業ガイドラインでも、勤務交代の申し送りや夜間の人員配置の関係で預かりができない時間帯がある場合は、あらかじめ利用者に周知するといった対応が示されています。
参照元:産前・産後サポート事業ガイドライン/産後ケア事業ガイドライン(こども家庭庁)
「夜は預かってもらえるのか」「どの時間帯なら任せられるのか」は、予約する前に施設へ直接確認しておきたい点です。
自治体の産後ケア事業とは、任せられる範囲が違う
産後のケアには、市区町村が実施する産後ケア事業と、民間が運営する産後ケアホテルという2つの入口があります。費用の差は大きいですが、金額だけを見て選ぶと、思っていた利用ができないことがあります。
自治体の事業は「託児」ではない
産後ケア事業は母子保健法に基づいて市区町村が行うもので、対象は出産後1年以内の母子のうち産後ケアを必要とする方です。短期入所(ショートステイ)型、通所(デイサービス)型、居宅訪問(アウトリーチ)型の3種類があり、短期入所の利用期間は原則7日以内で、分割して使うこともできます。費用は自治体ごとに異なり、大阪市の場合は次のとおりです。
| 種類 | 利用時間 | 利用料 | 利用日数の上限 |
|---|---|---|---|
| ショートステイ(宿泊型) | 1泊2日(5食)午前10時〜翌日午後7時 | 4,250円(その後1日ごとに2,125円) | 通算7日まで |
| デイケア(通所型) | 1日(2食)午前10時〜午後7時 | 1,500円 | 通算7日まで |
| アウトリーチ(訪問型) | 1回2時間程度 | 500円 | 通算5回まで |
参照元:産後ケア事業について(大阪市)
押さえておきたいのは、自治体の産後ケア事業が入院とは異なり、育児や身の回りのことはできる限り自分で行う前提であることです。大阪市の案内でも、託児・保育・家事のサービスではないと明記されています。助産師や看護師に相談しながら赤ちゃんと過ごす時間を確保する仕組みであって、預けて眠ることを主目的にした制度ではありません。
民間の産後ケアホテルは費用が上がる分、休息そのものを目的にした過ごし方をしやすく、預かりの範囲も施設ごとに設定されています。必要としているのが授乳や育児の指導なのか、それともまとまった睡眠なのか。ここが決まると、選ぶ入口も見えてきます。
なお、料金や対象月齢、利用日数の上限は自治体ごとに違うため、お住まいの市区町村の案内で確認してください。
自治体の申請は妊娠8か月から。産後に動くと間に合わないこともある
自治体の産後ケア事業は、産後に思い立ってすぐ利用できるとは限りません。大阪市の場合、申請期限は妊娠8か月以降からサービスの利用を希望する日の2週間前までとされています。申請後は承認通知書が郵送され、それが届いてから実施施設へ直接予約する流れになるため、必要になった週にすぐ利用できないことがあります。施設の混み具合によって希望日に添えない場合もあります。
参照元:産後ケア事業について(大阪市)
利用できる人の範囲も変わってきています。大阪市では2026年4月から対象者が「産後ケアを必要とする者」に見直され、心身の不調や育児不安があることを前提としない形になりました。手続きや対象月齢は自治体ごとに異なるので、母子健康手帳の交付時に渡される案内や、お住まいの区の窓口で早めに確認しておくと安心です。
出産したクリニックの隣で休める「産後院」という選択肢
ここまで見てきた身体の回復と、赤ちゃんのお世話を任せて休む時間を、出産する場所と続けて確保できるのが、ENAレディースクリニック産後院です。2025年4月に当院へ隣接して開院した産後ケアホテルで、産後6か月までの方とご家族にご利用いただけます。
夜もまとまって眠れる|24時間体制で赤ちゃんをお預かりします
産後院は1日2組さまだけをお迎えする施設で、スタッフが24時間体制でサポートにあたります。赤ちゃんは24時間いつでもお預かりしますので、夜中に起きていた時間をそのまま睡眠にあてていただけます。看護師・助産師が毎日お母さんと赤ちゃんの健康状態を確認し、必要に応じて隣接する当院を受診いただける体制も整えています。
30分から試せる|日帰り利用と、他院で出産された方の受け入れ
宿泊まで踏み切れない方には、日帰りの時間選択プランをご用意しています。産後6か月以内の方が対象で、料金は2,000円/30分から、最短30分・最長7時間の範囲でご利用いただけます。半日だけ預けて眠る、育児の相談だけしに来るといったご利用が可能ですので、そのときの状態に合わせて調整していただけます。
当院で出産された方以外も、お電話でご相談のうえご利用いただけます。生後6か月未満であれば、産後ケアホテルとしてのご利用も可能です。あわせて当院ENAレディースクリニックでは大阪市の産後ケア事業(ショートステイは生後2か月未満、デイケアは生後5か月未満が対象)も実施していますので、自治体の制度と自費のご利用を状況に応じて使い分けていただけます。
また、産後院は見学を受け付けています。妊娠中のうちにお部屋やスタッフの雰囲気をご覧いただくと、産後の判断がしやすくなります。ご見学・ご利用のご相談は、お電話にてお問い合わせください。