無痛分娩と和痛分娩の違いとは?麻酔の方法・痛みの取れ方・選び方まで解説

無痛分娩も和痛分娩も、麻酔などを使って出産時の痛みを和らげる方法です。ただし、どちらの呼び方にも医学的に統一された定義はなく、同じ方法でも施設によって「無痛分娩」と呼んだり「和痛分娩」と呼んだりしているため、名前だけで比べようとすると混乱しがちです。実際の違いは、名前よりも「痛みを和らげ始めるタイミング」や「痛みをどの程度抑えるか」に表れることが少なくありません。
この記事では、2つの呼び名が混在している背景を整理したうえで、無痛分娩と和痛分娩の違いと、産院選びで確認しておきたいポイントをお伝えします。
【この記事でわかること】
- 無痛分娩と和痛分娩の名称が施設ごとに異なる理由
- 無痛分娩と和痛分娩の、鎮痛を始めるタイミングや痛みの感じ方の違い
- 分娩方法を選ぶとき、産院に確認しておきたいポイント
「無痛分娩」と「和痛分娩」は何が違う?
「無痛分娩」と「和痛分娩」には、医学的に明確な定義の違いはありません。どちらも分娩時の痛みを和らげることを目的とした方法であり、同じ硬膜外麻酔を使っていても、施設によって「無痛分娩」と呼んでいたり「和痛分娩」と呼んでいたりします。
日本で無痛分娩を選ぶ方は年々増えており、全分娩に占める割合は2018年の約5.2%から2025年には約16.2%まで上昇しています。
参照元:硬膜外鎮痛分娩の現状 〜日本産婦人科医会施設情報からの解析〜(2025年11月)【PDF】
選択肢として広がる一方で、「無痛」と「和痛」という2つの呼び名が混在しているため、産院選びの入口で戸惑う方も少なくありません。
名称に統一ルールがない理由
「和痛分娩」という言葉には、統一された医学的な定義がありません。実際、施設によって「和痛分娩」が指す中身はさまざまです。硬膜外麻酔を用いながら痛みをある程度残す方法を和痛と呼ぶ施設もあれば、呼吸法やリラクゼーションまで含めて和痛分娩と案内する施設もあります。
この名称が広がった背景には、「無痛」という言葉への慎重さがあると考えられます。硬膜外麻酔を使っても、痛みの感じ方には個人差があり、まったくのゼロになるとは限りません。「痛みがなくなる」と受け取られかねない「無痛」ではなく、「痛みを和らげる」というニュアンスの「和痛」を選ぶ施設があるのは、そうした配慮によるものです。
また、海外では「Labor Epidural Analgesia」のように麻酔方法で表記するのが主流であり、「無痛」「和痛」という区分自体が日本独自のものと言えます。
名前ではなく「麻酔の方法」に注目する
名前の違いに振り回されないためには、実際に施設で使われている麻酔の方法を確認しましょう。
日本産科麻酔学会によると、分娩時の鎮痛に使われる代表的な方法は「硬膜外麻酔」「脊髄くも膜下硬膜外併用鎮痛」「点滴から鎮痛薬を投与する方法(静脈麻酔)」の3つです。このうち、多くの国で無痛分娩の第一選択とされているのが硬膜外麻酔であり、日本でも主流の方法となっています。
無痛分娩と和痛分娩では、鎮痛の始め方や痛みの感じ方はどう違う?
無痛分娩と和痛分娩は、同じ硬膜外麻酔を用いる場合でも、鎮痛を始めるタイミングや痛みの抑え方によって、出産中の過ごし方が変わります。
なお、前述のとおり「無痛分娩」「和痛分娩」の名称は施設によって異なります。一般的に、無痛分娩は硬膜外麻酔でおこなう方法を指し、和痛分娩には硬膜外麻酔のほか、静脈麻酔や脊髄くも膜下麻酔など、施設によってさまざまな方法があります。
以下の表は、硬膜外麻酔を用いる場合を例に、無痛分娩と和痛分娩の一般的な違いを整理したものです。まず概要を整理し、それぞれの詳細を後ほど説明します。
| 無痛分娩 | 和痛分娩 | |
|---|---|---|
| 鎮痛を始めるタイミング | 子宮口が3〜5cm程度開いた頃から開始でき、計画分娩では陣痛を起こす前に管を留置しておく | 分娩がかなり進んでから開始することが多い |
| 鎮痛開始までの痛み | 比較的早い段階から鎮痛を始めるため、強い陣痛を感じる時間は短くなりやすい | 鎮痛を始めるまでは、通常の陣痛の痛みがある |
| 痛みの感じ方 | 痛みの大部分が抑えられ、陣痛をほとんど感じずに過ごせることが多い | 痛みをある程度残したまま和らげる方法で、軽減の度合いには個人差がある |
| 計画分娩への対応 | 対応可能(施設による) | 一般的に陣痛発来後の開始が多い(計画分娩も可能な施設あり) |
※この表はあくまで一般的な傾向の整理です。実際の対応は施設や妊婦さんの状況によって異なりますので、詳しくは医師にご相談ください。なお、硬膜外麻酔を用いる場合、副作用や赤ちゃんへの影響の傾向は、無痛分娩・和痛分娩で基本的に共通です。
痛みの取れ方の違い
無痛分娩で用いる硬膜外麻酔では、背中から脊髄の近くにある「硬膜外腔」に管を留置し、局所麻酔薬や医療用麻薬を投与します。痛みを伝える神経の近くに直接薬を届けるため、鎮痛効果が高く、意識がはっきりした状態で自分でいきんで出産できるのが特徴です。子宮口が3〜5cm程度開いた頃から鎮痛を始められ、計画分娩では陣痛を起こす前に管を留置しておくため、比較的早い段階から痛みを抑えていくことができます。
一方、和痛分娩では、同じ硬膜外麻酔を用いる場合でも、分娩がかなり進んでから鎮痛を始めたり、麻酔薬の量を調整して痛みをある程度残したりするのが一般的です。陣痛の感覚を残しながら痛みを和らげる方法であり、鎮痛を始めるまでは通常の陣痛の痛みがあることを理解しておく必要があります。
静脈麻酔による和痛分娩の現状
和痛分娩の方法として、点滴から医療用麻薬を投与する静脈麻酔が紹介されることもあります。しかし、静脈麻酔で用いられてきた薬剤の一つであるレミフェンタニルについて、日本麻酔科学会は2024年、自発呼吸のある妊婦さんに分娩時の鎮痛目的で投与することは不適切であるとする提言を出しています。こうした背景から、現在の日本では、静脈麻酔による和痛分娩を積極的におこなっている施設はほとんどありません。
参照元:日本麻酔科学会「レミフェンタニルを用いた分娩時鎮痛に関する提言」(2024年8月30日)【PDF】
硬膜外麻酔の主な副作用
無痛分娩・和痛分娩のいずれも、硬膜外麻酔を用いる場合は副作用の傾向は基本的に共通です。硬膜外麻酔の副作用としては、足の感覚が鈍くなる、血圧が低下する、体温が上がる、尿が出にくくなるといった症状が報告されています。また、子宮口が完全に開いてから赤ちゃんが生まれるまでの時間がやや長くなり、吸引分娩や鉗子分娩の割合がわずかに高くなることがわかっています。
無痛分娩・和痛分娩のいずれであっても副作用の可能性はあり、「副作用がゼロの鎮痛法」はありません。頻度や重さの傾向を知ったうえで、ご自身の体質や妊娠の経過をふまえて医師と相談することが大切です。
赤ちゃんへの影響
硬膜外麻酔で使われる薬は、胎盤を通って赤ちゃんに届くことはほとんどないとされています。授乳への影響も少ないと考えられており、多くの国で無痛分娩の第一選択とされている理由の一つです。
分娩方法を選ぶとき、産院に確認しておきたいこと
「無痛分娩」「和痛分娩」の名称で産院を比べるのではなく、具体的にどの麻酔方法を使うのか、どのような体制で対応しているのかを確認するのが、納得のいく選択への近道です。
確認ポイント① どの麻酔方法で、いつから鎮痛を始めるか
「無痛分娩」「和痛分娩」という名称だけでは、どの麻酔方法を用いるのか、鎮痛をいつから始めて痛みをどの程度抑えるのかはわかりません。名称だけで判断せず、具体的な麻酔方法と鎮痛の進め方を確認してみてください。
あわせて、計画分娩のみの対応か、陣痛が始まってからの対応(オンデマンド対応)も可能かどうかも、事前に確認しておくと安心です。
確認ポイント② 麻酔に対応できる時間帯と医師の体制
無痛分娩に対応できる時間帯は、施設によって異なります。平日の日中のみ対応する施設もあれば、24時間対応の施設もあります。夜間や休日に陣痛が来た場合にどのような対応になるかは、事前に把握しておきたいポイントです。
また、麻酔を担当する医師が麻酔科専門医なのか、産科医のみで担当しているのかも確認しておくと判断材料になるでしょう。
無痛分娩も和痛分娩も選べる体制で、納得のいくお産を
ENAレディースクリニックでは、無痛分娩と和痛分娩の両方に対応しています。ご自身の状況やご希望に応じて、分娩方法を選べる体制を整えています。
当院では、麻酔ができる医師が24時間365日体制で無痛分娩に対応しています。計画無痛分娩はもちろん、陣痛が始まってから「やっぱり無痛分娩にしたい」と希望された場合のオンデマンド対応も可能です。
「自分の体質や妊娠の経過に合うのはどちらの方法か」「費用や入院期間はどの程度か」など、記事だけでは判断しきれない疑問は、無痛分娩説明会で直接ご相談いただけます。説明会は毎週水曜に開催しており、ご家族の同伴も可能ですので、ぜひお気軽にご参加ください。